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「史上最大の作戦!」 (中編)

「花を教科書とする大学」
「世界の移植センター」
「世界最大の種子銀行(ジーン・バンク)」
「植物界のノアの箱船」

これは、ある植物園に向けられた讃辞の言葉の一例である。


同時に、この植物園には次のような非難の言葉も寄せられてきた。

「学術を隠れ蓑にした、盗掘家集団」
「植物資源の略奪者」
「英帝国主義の片棒を担いだ尖兵」


そう
『キュー王立植物園 (Royal Botanic Gardens, Kew)』
のことである。


 
 ロンドンの南西、テムズ川沿いの高級住宅地キュー。
ここに、『キュー王立植物園 (Royal Botanic Gardens, Kew)』 、通称『キュー・ガーデン』がある。

 『キュー・ガーデン』ことキュー植物園のおこりは、18世紀にオーガスタ皇太后(オーガスタ・オブ・サクス=ゴータ)によって、公園が整備されたことにはじまる。当初の目的は、単なる公園であり、またイギリス王族の離宮としての役割が強かった。現在でも敷地内には、ウィリアム・チェンバーズ設計の、一見中国と見まごうパゴダも建っている。しかし、まもなくこの植物園は、大英帝国の歴史上なくてはならない役割を幾つも果たすことになるのだ。

 英語で"Garden"と書けば、それは単なる「庭・庭園」である。
しかし、"Botanic"、つまり「植物学」という言葉がつくと、それは「研究機関」としての意味合いが色濃くなる。つまり、植物の学術的研究を行うための「大学」となるのである。植物が重要な戦略物資となる、ということに、初めて気がついたのは大英帝国だろう。実は、これってかなり凄いことなのである。

 たとえば、自国には自生していない農作物があったとしよう。
しかし、その農作物は自国で、どうしても必要だ。そのために、他の国に多額の金銭を払って輸入している。でも、もし、その植物を自分ところで作れるようになったらどうなるだろう。
まず、他の国にお金を払わなくてもすむことになる。輸入に頼らないわけだから、安定して手に入れることも可能になるだろう。さらに、別の国に余った資源を売れば、莫大な富を得ることもできるじゃないか。
とはいえ、これは容易なことではない。
 キュー植物園の発展で大きな役割を果たしたのが、ジョゼフ・バンクス卿(Sir Joseph Banks)だった。クック提督による第一回冒険航海(1768-1771)に参加した彼は、南米およびオーストラリアの植生調査で名を上げる。1773年に、キュー植物園の顧問に任じられたバンクスは、大規模な植物採集・収集計画を推し進めた。バンクスの意を受けて、ロンドンから大勢の植物学者たちが、貴重な植物を求めて、世界の秘境・奥地にまで駆けめぐることになったのだ。彼らは、世界各地からバンクスの元に珍しい花々の乾燥標本を送ったため、現在のキュー植物園のハーバリウムには650万点に及ぶ、貴重な押し花標本が保管されている。

 キュー植物園は、単に世界中からロンドンへと、貴重な植物を集めただけではなかった。彼らの果たしたもう一つの大きな役割、それは「植物の移植」という分野である。

 当時のイギリスは、大英帝国の名の通り世界各地に植民地を拡大していく途上にあった。特に、1776年に北アメリカが独立を果たすと、彼らの関心事は自然と東へ、つまりインドや東南アジア、オセアニアへと移っていったのである。そして、彼らは気がついたのだ。「世界の各地には、別の場所とよく似た気候や環境がある」ということに。もし、他の場所から採取した植物を、自分たちの都合のいい場所、たとえば植民地などに植え替えることが出来れば、それはイギリスにとって莫大な富を産むことになるのではなかろうか。

 そして、この考えのもとに勧められた計画の一つが、ブラジルからのゴムノキ移植という「史上最大の作戦」だったのである。
 当時、ブラジルは世界的なゴムの需要を独占的に引き受けていた。何しろ、世界のどこを捜しても、ブラジルに生えているパラゴムノキほど良質の天然ゴムを産出する木はなかったのである。またゴムノキの移植は難しく -ブラジル政府が国外への持ち出しを禁じていたこともあったが、当時の輸送や保管といった技術的未熟さもあった- ブラジルの優位は揺るがなかった。

 キュー植物園の元園長ジョゼフ・フッカーは、南アメリカからキューへの「パラゴムノキ"誘拐"輸送計画」を極秘裏に進める。この作戦成功のポイントは2つ。「ブラジル政府の目を盗んで、国外にゴムノキを持ち出すこと」と、「ゴムノキを無事にイギリス本国に届ける」ことにかかっていた。

 1876年、イギリスの探検家 ヘンリー・ウィッカムが、現地の協力的なインディオの助けを得て、アマゾンの密林から上質の7万個の種子を探し出すことに成功する。発見されたゴムノキは、すぐに蒸気船に乗せられて、アマゾン川を下り大西洋へ。ここで、第一のチェックポイント、つまりブラジルの税関を切り抜けねばならない。ウィッカムは、「イギリスのビクトリア女王陛下に献上する、珍しい植物の標本である」として、輸出許可を申請する。もっとも、「女王に献上」された”あと”どう使われるかは一切触れてないわけだが。なにはともあれ、ブラジル税関はこの申請を受理。イギリスは”合法的”に、ゴムノキを手に入れることが出来た。

 ここからは、時間との勝負になる。
輸出許可を得たウィッカムは、待機していた貨物船にゴムノキの種子を運び入れ、イギリス本国へと向かう。大西洋の海の上では、イギリスに莫大な富をもたらすであろう、この金の卵のために熱心な世話が行われた。

 イギリスの港町リバプールでは、特別列車が待っている。大西洋を渡ったゴムノキたちは、慎重にかつ迅速に列車に積み替えられ、一路ロンドンへと向かう。そして、キュー植物園にもうけられた温室に運び込まれたのだった。

 それから数週間後、7万個の種子のうち2397個が無事に発芽した。そう、イギリスはパラゴムノキの奪取に成功したのである。ブラジルがそのことに気づいたときには、既に手遅れだった。

 しかし、ゴムノキを栽培し、そこから利益を得るためには温室で育てていたのでは埒があかない。ブラジルと同じような熱帯雨林がどこかにないだろうか。いやいや、イギリスはすでにめぼしい場所を見つけていたのである。セイロン(現在のスリランカ)、そしてマラヤ(マレーシア)なら、気候も植生も似ている。そして、ここはイギリスの植民地支配下でもあったのだ。とはいえ、ただでさえデリケートなゴムノキ・苗木の長距離輸送は、非常に困難なはず。しかし、キュー植物園には”秘密兵器”があったのだ。それが、通称「ウォードの箱」と呼ばれる輸送ケースだった。

 木製のケースとガラスを組み合わせたこの箱は、内部の環境を変えることなく、植物を保管・輸送することが出来る優れたものだった。長距離航海の際にも、太陽の光に当てることも出来るし、病気が発生しても一つのケースだけで被害を押さえることも出来たのである。

 発芽から2ヶ月後、1919本の苗木がセイロンに向けて、20本の苗木はシンガポールに向けて発送された。現地に到着した苗木の植え替えは大成功し、わずか30年後の1912年には、東南アジアがブラジルを抜いて天然ゴムの一大産地として君臨することになったのである。
 では、イギリスにゴムノキを奪われてしまったブラジルはどうなったのだろう。
砂糖の時もそうだったが、ブラジル(そしてポルトガル)っていつもツメが甘いんだよなぁ。結局、香辛料交易もポルトガルはいつの間にか蹴落とされてたし…。

 ブラジルのゴム景気の象徴でもあったマナウスは、残念ながら急速に寂れていくことになる。巨額の費用を投じて作られた劇場も、ゴムの倉庫やフットサルの練習施設になってしまった。訪れる人もいなくなった劇場は、南米特有のシロアリに食い荒らされ、見るも無惨な状態に。

 ところが、1970年代頃からマナウスはアマゾン観光の拠点として脚光を浴びることになる。近くに国立公園や環境保護区域が作られ、観光や学術調査で訪れる人々が増えたのだ。廃墟と化していた「テアトロ・アマゾナス」の修復プロジェクトも始まり、1990年に再び劇場として幕を開くことが出来たのである。
 では、次回はキュー植物園がいままでどんなことを行ってきたのか見てみることにしよう。実は、有名な出来事のあちこちに、驚くほどこの植物園は登場しているのだ。

(続く)
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2007.09.29 Sat 10:02  |  ブログ移動のお知らせ

本日に訪問させていただきました。
実はこちらが夢幻ゲームショップブログを移動しました。よろしければ是非遊びに来て下さい。 o(^0^)o   http://blogs.yahoo.co.jp/mugen_rmt
…ちなみにこちらは色々なネットゲーム通貨取引のサービスを運営しています。
http://www.rmt-trade.com   
これからどうぞよろしくお願いします(*′ `*)

2007.09.29 Sat 14:47  |  

宣伝ありがとうございます。あなたの宣伝が、さらに効果的なものになるためのテクニックをご紹介いたしましょう。

>本日に訪問させていただきました。
「本日に」と書くと、くどい感じがします。いらないと思いますよ。どうしても書きたければ、「に」を「、」に変えてみてはいかがでしょう。

>実はこちらが夢幻ゲームショップブログを移動しました。
同じ理由から、「が」を「へ」に変えてみませんか?

>こちらは色々なネットゲーム通貨取引のサービスを運営しています。

大航海時代オンラインの利用規約では、はっきりと「(仮装通貨の)ゲーム外での有償取引の対象とする行為」を禁じる条項がございます。

>これからどうぞよろしくお願いします
イヤです。


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